常識を超える量子的な特性を持つトポロジカル材料

Topological

トポロジカル材料

トポロジカル材料

東大初のスタートアップ企業であるTopoLogic株式会社が手掛けているトポロジカル物質はバンド構造の特殊性から、2つのマクロ効果「異常ネルンスト効果、異常ホール効果」を示し、新しい特性を持ったデバイスを可能にします。
異常ネルンスト効果では、薄くて簡素な熱流センサを実現することができ、熱快適検出可能な生体センサ、バッテリーや半導体の異常検出、製造設備の故障予知・監視モニタリング、熱漏れ、断熱検出、熱発電デバイスへの応用が可能です。
一方で、異常ホール効果は、超高速磁気メモリを実現でき、エンベデッド1次キャッシュメモリ、IoTデバイス向け低電力消費メモリ、不揮発ロジックデバイスへの応用が期待できます。
当社はTopoLogic株式会社と協業の上、同社トポロジカル物質の訴求活動、プロジェクト化を推進いたします。ビジネスモデルは、同社知的財産「IP(Intellectual Property)」の販売または貸与することです。

ビジネスモデル
図 ビジネスモデル

トポロジカル物質とは?

2016年にノーベル物理学賞を受賞した、これまでにない電子構造を持つ物質。過去にそのような発見では半導体の発見が挙げられます。トポロジカル物質は電子バンドに特異点(ワイル点、ディラック点)を持つその位相幾何学的特徴(トポロジー)から名前を得ています。その特異点に起因して非常に強力な仮想磁場(ミクロな磁場)が発生し、物質内の特殊な電子の流れを誘起します。その結果として他の物質にはない様々な電磁気的特性を示します。
トポロジカル物質のバンド構造に起因する、主なマクロ効果として異常ネルンスト効果と異常ホール効果が挙げられます。これらの効果はトポロジカル物質の仮想磁場の影響によって発生する効果であり、トポロジカル物質が特に示す効果です。これらの効果は既存物質には見られない効果でもあり、その結果として、これまでとは全く異なる構造のデバイスや電子部品の実現を可能にします。
この特殊なマクロ効果の一つである異常ネルンスト効果は熱電効果の一種であり、物質の中の温度勾配に対して電圧が発生する現象です。同様の熱電効果としてはゼーベック効果が一般的に知られていますが、ゼーベック効果が温度勾配と同じ方向に電圧ポテンシャルが発生するのに対し、異常ネルンスト効果では温度勾配に垂直方向に電圧ポテンシャルが発生します。これまでの熱電材料は温度勾配の方向に電圧差が発生するため、構造が複雑、薄くできない、コストが高いという課題がありました。それに対し、異常ネルンスト効果を用いた熱電デバイスでは温度勾配と電圧ポテンシャルの方向が異なるため、自由度が高い熱電デバイスの設計が可能になります

トポロジカル物質

引用:JST CREST 新技術説明会「磁性材料を用いた革新的熱電変換技術とその熱電モジュール・熱流センサー応用」
平成31年3月8日

TopoLogic株式会社とは?
TopoLogic社は2021年7月創業、東京大学理学部物理学科の中辻知教授の研究グループが研究開発している「トポロジカル物質」を利用した新たなデバイスとして社会実装するために立ち上げられた、東大発量子材料スタートアップ企業です。
同社は横方向の熱電変換効果や、新たな秩序に基づくスピントロニクスにより、従来では実現が困難であったデバイス開発などを目指しております。
Topological株式会社

アプリケーション例

熱流束センサTL-Sensing

熱流束センサTL-Sensingは、物質内部の温度勾配によってそれに比例した電圧ポテンシャルが発生し、その電圧値を読み取ることによって、温度勾配(すなわち熱流束)を検知するものです。従来のゼーベック型の熱流センサに比べ、素子の厚さが非常に薄く(100nm~)でき、0.1℃というわずかな温度差でも大きな温度勾配が得られ、十分検出可能です。さらに素子が薄いことにより素子自体の熱容量が非常に小さいことから、0.1秒での熱の流れの変化などを高速応答で捉えます。また、スパッタリングなどの従来プロセスでの製造及びライン転用が可能なため従来型(数万円~数十万円程度)よりも経済的メリットを生み出します。また、基板の種類も限定せずに、シリコン、プラスチック、フィルムなどでも成膜を実現します。

熱流束センサ作製サンプルのイメージ
熱流束センサ作製サンプルのイメージ
仕様
寸法 基板:20×20×0.5mm
素子回路:メアンダ構造
既存の熱流束センサより薄いことが実証できます
熱電性能 0.2μV/W/m2 既存の熱流束センサと比較して遜色ない熱電性能を示します
時定数 0.01秒 既存の熱流束センサと比較して100x速い反応を示します
材料
(スパッタ)
MgO基板:t0.5mm
トポロジカル物質:t100nm
表面保護:カプトンテープ
既存センサと比較して非常に単純な構造であり、信頼性、製造性が優れています
本デバイスは共同での実証や評価において使用可能な、簡単な実証用センサです。共同開発の際には、貴社ニーズに合わせて面積、形状、厚み、基板材料などのセンサ開発を行います。
貸出熱流束センサ

熱流束熱流センサの応答性、精度などの基本特性を体験していただくため、有償にて2週間程度を目安にサンプル貸出を行っております。基本スペックは下記をご参考にしてください。
センサはアナログ出力となりますので、感度などの評価時にはお持ちのデータロガー、計測電源、オシロスコープなどを介して、評価してご確認ください。

貸出熱流束センサのイメージ
貸出熱流束センサ

サンプル貸出
仕様
寸法 基板:20×20×0.5mm
素子回路:メアンダ構造
パッケージ寸法:36×32×1.6mm
既存の熱流束センサより薄いことが実証できます
熱電性能 0.2μV/W/m2 既存の熱流束センサと比較して遜色ない熱電性能を示します
時定数 0.5秒 既存の熱流束センサと比較して速い反応を示します
センサ素子
(スパッタ)
MgO基板:t0.5mm
トポロジカル物質:t200nm
既存センサと比較して非常に単純な構造であり、信頼性、製造性が優れています
センサ構成 アルミパッケージ
シリコーン樹脂とTIM材による熱接着
センサ素子を保護するためにパッケージングしております
価格 2週間あたり10万円から貸出可能 長期間の貸出や、貸出と実際の評価サポートも対応します
センサの基本性能を体験していただくためのサンプルです。
パッケージングによる影響により、時定数は素子のみと比較して低下します。
熱流検出のアプリケーション
熱流検出のアプリケーション
従来のゼーベック型の熱流センサでは、そのコストの高さから研究開発用途に限定されていました。一方、トポロジカル物質による熱流センサは、異常ネルンスト効果と材質、サブミクロンオーダーの厚みにより、熱流に対して非常に感度が高く(0.001秒オーダー)、熱のダイナミクスそのものを捉えることができ、さらに素子設計の柔軟性、低コストから、幅広い応用を実現します。
例えば、製造工程における発熱状況、異常発熱の可視化や、発熱に基づく故障予測・故障予知・監視モニタリングなどに用いることができます。また、ウエアラブルデバイス向けとしては人体や動物の体からの発熱(吸熱)をモニタリングし、健康状況や快適性の推定も可能とします。なお、車載やIoTデバイスへの組み込みも可能で、熱に関する種々のモニタリングも実現します。
さらに、素子の表面に特定の化学物質と反応して反応熱収受が生じる物質を付与することで、いわゆるガスや抗原などの物質検知自体も可能とします。世の中のあらゆる活動から熱収受を生じ、活動モニタリングのツールとして本方式の熱流センサが利用可能と言えます。

熱流検出のアプリケーション

化学センサ、ガスセンサ

熱流センサ素子の表面に、機能膜として触媒層を設けることで、特定の物質との反応を促進させ、その反応に基づく熱流を検出することが可能です。この原理を利用し、例えばプラチナ触媒層により水素の反応を促し、これにより得られる熱流から水素の付着を検知することができます。本方式の熱流センサの感度を利用し、数ppmオーダーの水素濃度を検知することも可能であると考えております。これにより、水素プラントや燃料自動車等における配管やタンクからの僅かな水素漏れも検知することができます。
また、水素に限定せずに適切な機能膜を選定することで、アンモニアや炭化水素ガスなど、あらゆる種類のガス検知が可能になると考えております。

高速メモリMRAM

現時点では、具体的に応用例などを説明ができませんが、将来有望なメモリを実現できる可能性を秘めております。

光センサ

熱流センサ(またはそのセンサの表面に設けられる光吸収膜)に光が当たると、光のエネルギーが熱に変換されます。その熱を熱流センサが検出することにより、受光素子、光センサとして機能させることができます。TL-Sensorの熱流センサの高速応答性により、受光を0.01秒のオーダーで検出することができるので、従来の受光素子を用いたシステムよりもより応答性の高いフィードバックを実現することができます。

その他

展示会、セミナー
  • 【終了】2023年9月7日(木) ウェビナー開催(参加無料) 物性物理の研究業界で注目を集めているトポロジカル物質の特性、応用デバイスである高応答性熱流センサを紹介します。

カタログダウンロード

トポロジカル材料のカタログを下記よりダウンロードいただけます。

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