電子回路プリンタ V-One
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粘度とは?
2022年11月11日
今回は導電性インクにおける「粘度」とは?をお話いたします。
いきなりですが問題です。粘度とは、いったい何でしょうか?
例えば水は注がれた器を逆さにすると直ぐにこぼれ落ちますが、蜂蜜はなかなか落ちてきません。このように粘度とは流体の流れに対する抵抗を表すパラメータです。粘度が高いほど液体の分子間の摩擦が大きいため流れが遅くなります。単位は”cP”で表し、常温において水の粘度は1cP、蜂蜜の粘度は約10,000cPです。つまり常温で蜂蜜は水の1万倍流れにくいと言うわけです。粘度は様々な単位で表されることがあり、”Pa・s”とも表しSI単位系では”N・s/m2”で表します。
1000cP = 1kcP = 1Pa・s
粘度の把握はなぜ必要でしょうか?
プリンテッドエレクトロニクスの分野では、製造の際に様々な粘度の導電性インクを使用しています。インクの粘度により互換性のある基板や印刷手法が異なるため、目的に応じた基板や印刷手法を選択する必要があります。私たちは下記事項を主張しております。
「我々がインクを選択する際に最も注視すべきことは、使用する印刷手法・機器に適しているかどうかです。そのためにインクジェット印刷時に高粘度のインクを用いることはまずございません。」
以下に各粘度の範囲における適切な印刷法をまとめました。
印刷手法 | 導電性インク粘度範囲(cP) |
直接インク書込み法(DIW法)※1 | 1,000-200,000 |
---|---|
スクリーン印刷 | 1,000-100,000 |
フレキソ印刷 | 1-250 |
グラビア印刷 | 10-100 |
インクジェット印刷 | -1 |
※1 VOLTERA社製V-One、NOVAはDIW (Direct Ink Writing)法を用いており、使用可能な導電性インクの粘度範囲が広いです。
生産規模の拡大へ
スクリーン印刷での試作は、マスク・版の費用及びパターニングの変更によるマスク替えなどのタイムロスが発生します。しかしDIW法では迅速かつマスク費用を抑えることができ比較的安価で印刷を行うことができます。これにより、最終的には試作時間の短縮ができ、生産時の時間軸の短縮に繋がります。
また、新製品のNOVAはフレキシブルエレクトロニクスの試作に対して、より多くの機能を有するような設計されております。詳細については弊社へお問合せください。
インク組成の粘度に与える影響は?
導電性インクの主要素として、FillerとVehicleがあります。
- Fillerは金属粒子で導電性を有し、インクに電気的特性を付与します。
- Vehicleは結合剤、分散剤、溶剤、添加剤を指します。下記の効果をもたらします。
- 金属粒子の凝集抑制
- インクの速乾促進
- 化学的な構造安定、フレキシブル性
先述のように、スクリーン印刷を行うには高粘度のインクが必要です。これらは一般的に金属含有量が高い(最大で80%程度のFiller)ことから、導電性が高いです。一方でインクジェット印刷には低粘度の水性インクを用います。
常10~20%程度であり、残りは溶媒です。金属含有量が少ないため導電性は低く、また低粘度のためインクの層が薄くなり塗布後に破損しやすいと言う特徴があります。
事前の確認ポイント
インクの粘度に影響を与えるファクターは数多く存在し、その一つにチキソトロピー現象があります。この現象はせん断応力下において流体粘度が変化すると言うものです。これによりDIW法でインクにせん断応力が掛かることで粘度低下が起こり回復に時間を要します。それに伴い粒子の凝集が引き起こされ、ノズル目詰まりの要因となります。VOLTERA開発チームは高粘度のインクを用い、開発・調合を繰り返すことでチキソトロピーを引き起こしにくいDIW法を確立しました。
化学の専門家になる必要性はありません
目的に応じたインク選択のために考慮すべき点は多いですが、必ずしも化学の専門家になる必要はありません。印刷手法や材質選びには、まずは粘度を気にしていただければ十分です!
ご不明点がございましたら、当社にご連絡いただければ幸いです。
次回、パンケーキにメープルシロップをかける際には、同記事を思い出していただければ幸いです。
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